悪魔に愛された男

福岡に居た頃、消防関係のバイトをしていた事がある。
マンションや学校等に行き、備え付けてある消火器や熱探知器を点検したり、避難梯子をのぼったりおりたり、学校の消火訓練に立ちあったり、みたいなのが主な仕事内容で、黙々とやる感じが性格にあっていたのか割と長く続けた。
そのバイト先にUさんという38歳くらいの素人童貞風の社員がいた
見た目は以前K-1にいた角田選手にとても似ている。
この角田さん、皆様の御想像どーり、“やらかしマン”である。

ある日の朝、ロッカールームで作業着に着替えてると「角田あぁぁ!!」という怒鳴り声がした。驚いてロッカールームから顔をだすと、角田さんが部長から怒られまくっている。よく見ると右腕には包帯。

「どーしたんですか?」とその辺にいた社員に質問すると、どーも小学校の消火訓練で何かやらかしたらしい。 消火訓練での我々の仕事は、学校の校庭に集まった生徒達の前で消火器の使い方を説明し、次は実際やってみせる。2?四方の鉄板の上に着火材を載せ、オイルをピュッピュッとかけて点火。そしてゴウゴウと燃える火を消火器で消火してみせるわけだ。

事件は着火材に火を点ける時におきたらしい。
社員Aが消火器の説明をした後、角田に着火を促す。「はい!それでは実際に火を消してみます!」そして角田の方を一瞥。「着火してください」
角田は「はい!」と青年のようにフレッシュな返事をし、鉄板に置かれた着火材にオイルをかける。ピュッピュッ。
そしてチャッカマンで火を点ける。着火。
「着火しました!」と絶叫にちかい声を発する角田。
しかし着火した火はすぐに消えてしまい、白い煙の線が一本、情けなく空にのぼる。
〈次号に続く〉